今年最後の代表の試合である韓国戦が終わった。
結果は引き分けだが、日本の判定勝ちともいえる内容ではなかっただろうか。
日本は“世界のトレンド”4-2-3-1。右サイドバックには駒野を、怪我で離脱した岡崎のいた右ウイングの位置には松井大輔をスタメンで起用。同じく怪我の川島に変わってキーパーには西川が入った。基本的にはアルゼンチン戦と同様の布陣。
韓国は試合前の監督の発言通り3バックを敷いてきた。3-2-4-1ともとれる布陣。配置を観ただけでサイドに問題がありそうだ。
会場であるソウルオリンピックスタジアムはほぼ満員。
発炎筒もたかれ、まるでヨーロッパのスタジアムで試合をしているかのうような錯覚に陥るほど、スタジアムのテンションは上がっていたようだ。
試合前に気になったのは、国歌斉唱の時に“敬礼”をしていた韓国の20番。最近は“とんと”敬礼をしている選手を観ていなかっただけに“かなり”気になった。※チェ・ヨンスを思い出してしましました(笑)
さあキックオフ。
試合開始直後から中盤での攻防が続く。
日本はサイドを中心に攻めこもうとするが韓国のチェックが速い。
中の選手が“ブルトーザー”のように外へと押し出す。
しかし一人ひとりの走行距離が長いため、効率的とは言えない。
果たしてこの韓国のプレスは終盤まで持つのか…
前半16分過ぎから韓国は自陣に引きこもり出した。
日本のカウンターを警戒したのか、それとも自分たちがカウンターをするために“あえて”日本に持たせたのか、それとも早くも疲れたのか…
じっくりとボールを回して、穴を見つけたい日本だが、“全く”効果的に崩せない。
ボール回しが上手いと言われる日本だが、それを実感したことは“ほとんど”ない。こんな時こそ基本に忠実に“サイド”から手数をかけて崩したいのだが、韓国選手が密集している中をこじ開けようとしていた。
日本も韓国のカウンターを警戒してか、思うようにラインを上げられない。
お互いに間延びした展開。
もはや親善試合の要素はほとんど見当たらない。どちらも負けたくないのだ。
そうこうしている内に前半終了。
お互い決定的なチャンスはなかったが、本田が高い位置で奪い、そのまま“強引”にシュートという場面が何回かあった。フィジカルに優れた韓国をなぎ倒す本田の強さが際立った前半だった。
後半も“若干”の日本ペース。
韓国の最終ラインが深いため、中盤で結構ボールを拾えていた。前田のポストを使おうとするが、ボールをトラップした瞬間潰される。ワントップの前田に対するマークはキツかった。※マンマークっぽかった…
54分。日本の最終ラインの集中力が切れ始める。
今野のミスから韓国に決定機が訪れるが、西川が好ブロック。
これを機に韓国の猛攻が始まる。
58分には韓国のコーナーキックから“モナコのエース”パク・チュヨンが打点の高いヘディング。長友がクリアしたが、これも決定的。一瞬のチャンスを逃さない韓国の“したたかさ”が垣間見えた。パク・チソンだけではなく、パク・チョヨンもパーマを“あてて”いた。韓国ではパーマがブームのようだ。
66分、国歌斉唱で“敬礼”をしていた20番がOUT。
ピッチを出る時も敬礼をしていた。角刈りが似合う“男の中の男”って感じの選手だ。この試合では、左サイドを何回か突破してた。知らなかったが柏レイソルに在籍していたことがあるらしい。韓国では“リトルマラドーナ”と呼ばれる27歳。この硬派なキャラクターは今後も注目だ。※今度観る時はパーマだったりして(笑)
72分には香川OUT、細貝IN。それに伴い、本田が左ウイングへ、細貝は中盤センターへ入り、システムを4-3-3にチェンジ。選手交代を機にシステムをチェンジする交代策も“世界のトレンド”だ。
76分には、中央でボールを奪った長谷部がバイタルエリアへ向かってドリブル。マークを引きつけてから右サイドに流れていた松井に“決定的”なパス。トラップは流れてしまったが、角度があまりないところから強引にシュート!
ハンド!!
完全なハンドだったが審判は流した。
本田が右サイドをえぐりカットイン。相手DFと競り合いこぼれ球となったが、走りこんできた長谷部がシュート!この時は“吹かした”が、長谷部のミドルは武器になりつつある。長谷部の“試合展開をみる目”は確実にアップしていると感じた。
終了間際、本田がセンターライン右でボールを奪い、そのままゴールへ向かって突進。3対3の状況を創り出すが、そのまま“強引”にシュート!残念ながらキーパーが伸ばした手に当たってゴールならず。両サイドがフリーだっただけに、そこを使っても良かったが、これは親善試合。勝負を仕掛けたことを評価したい。実際我々は本田が本番になればフリーの選手にパスすることを知っている(デンマーク戦参照)。
ほどなくして試合終了のホイッスル。
日韓ライバル対決はスコアレスの引き分けで終わった。
韓国に関して言えば、去年の方が“確実”に強かった。
パク・チソンがいなかったとはいえ、それを差し引いてもワールドカップまでの韓国の方が絶対に強い。
世界屈指のサイド攻撃を持ちながら、それを捨ててまで新しいスタイルにこだわる必要が果たしてあるのだろうか。パク・チソンは来年のアジアカップ終了後に代表からの引退を発表している。“脱パク”が今後の韓国の課題であることは間違いないが、スタイルを変えてしまうのはどうだろうか。
日本は収穫が多かったのではないか。
今回の合宿は10日ほど。その中でザッケローニさんの戦術をどこまで浸透させられるか、というのはひとつのテーマだった。限られた時間の中で、選手たちは(ある程度)理解し、(ある程度)表現できていたように思う。
特に、この日の韓国戦では、完全アウェーの中で、しっかりと戦う姿勢を観せてくれた。こんなに日本代表が“頼もしく”見えたのはいつぶりだろう。以前のような海外組、国内組という区別はなく、本田圭祐、長谷部誠を中心にチームとしてまとまっている感じがあった。有名な監督の下で、組織的な“最先端のサッカー”をしていくのが日本のスタイルではないか。向かっている方向は正しい気がする。
試合後、ザッケローニさんがこんなことを言っていた。
「自分がいい選手と気付いていない選手がまだまだいる。このチームがいいチームと気付いていない選手がまだまだいる」
まずは自分に、そしてチームに自信を持つこと。この強い気持ちが“勝者のメンタリティ”を生み出すのかもしれない。
修正点は山のようにあるが、ザックジャパンの旅はまだ始まったばかり。
もう少しは夢心地でいてもいいだろう。選手だけではなく、ザッケローニさんの“手ごたえ”をつかんだ2試合だったのではないだろうか。
今は“上々の船出”と言っておこう。

この試合を観る限り、間違いなくワールドクラス!今後の更なる成長を楽しみにしています!