ここは“リアル北斗の拳”、“世界最悪の犯罪国”といわれた南アフリカ。
そこで日本人3人を中心に大盛り上がりしている。
周囲には、日本人どころか、他の外国人もほとんどいない。
いるのは“黒人”だけだ。
その黒人が、次から次へと我々3人の周りにやってくる。
しかもみんな好意的。まるで憧れのスターを見つけたかのように、次から次へと“黒人”がやってくる!
女の子(当然“黒人”)が次から次へと写真をせがむ。我々と一緒に写真を撮りたいようだ。
あんなにビビッていた我々だが、“恐怖”を“楽しさ”が完全に上回っている。
薬物の売買が行われていた路地のことを、銃で撃たれた跡が残るホテル近くのスーパーのことを全く忘れてしまっている、いや覚えているが、そんなことはどうでもいいことになってしまっていた。
とにかく楽しいのだ!
何をする訳ではない。
ただその場にいて、ビールを煽り、黒人と戯れていることが楽しいのだ!
南アフリカに来てからというもの、常に注意深く行動していた。やりたいこともやらず、生きるために最低限のことしかしていなかった。その反動がここで出た感じだ!
人と触れ合うだけでこんなにテンションが上がるとは夢にも思わなかった。

女の子に囲まれてうれしそうなモリモリ…(ん!?この子パンチパーマ?)

酔っ払いのワカさんの元へも続々とやってくる…(向かって左の子、目つき悪すぎ…)

テンション上がりっぱなし…(下がる気配なし…)
時計は深夜0時を回っていたが、ステージ場ではDJがご機嫌なナンバーを流している。まだまだ終わる気配はない。(本来は深夜0時で終了だが、この日はもっとも盛り上がったらしく、1時近くまでファンフェスタは続いた)
突然ナベちゃんがその場を離れた。
異変に気が付いたひらっちとワカさんがナベちゃんの元へと向かう。
「ナベちゃん、どうした?」
「ゲロゲロゲロ…」
返事をする間もなくナベちゃんは戻し始めた。ピンク色の“ゲロ”だ!
さっき食べたシュリンプが戻っている…。それも大量に…。
気が付くと周りが騒がしい。
周囲を見渡すと、黒人がナベちゃんを取り囲み、大声であおっている!
口笛を鳴らす者、ブブゼラを吹き鳴らす者、手を叩く者…。
ナベちゃんを中心に大きな輪ができメチャクチャ盛り上がっている!
ナベちゃんのゲロは2分ほど続いた。
ナベちゃんが吐き終わるほぼ同時にフェスタも終了。
みんなゆっくりと会場を後にする。
「まだ飲みたいっすネ…」
ひらっちの思いはみんなの思い。ワカさんの全く同じ気持ちだ。
「とりあえずモリモリ探そう」
すぐに見つかったが、モリモリはさっきのパンチの女の子とまだ一緒にいた。

傍から見て気が付いた!新たに忍び寄る〇イズの恐怖!モリモリ、それだけはダメですゾ!
ひらっちが慌てて二人を引き離しにかかる…。
パンチの女の子がモリモリに
「ビーチ行こう!」
としきりに誘っていたらしい…。
恐るべし南アフリカ…。
モリモリをパンチ女から引き離し、メインストリートへ出て店を探すがどこも開いていない。
キョロキョロしていると、日本人の男の子が寄ってきた。
「凄かったですネ!」
どうやら一部始終を遠くから見ていたらしい。
「みなさんを中心にすごい輪になっていましたヨ!ボクは怖くて行けませんでしたけど」
聞くとこの子は東京から来た20歳の学生。明日帰るので、ファンフェスタ会場を見にきたようだ。
その若者にモリモリが
「ダメだよ!若いんだからもっと無茶しなきゃ!オマエはもっと無茶しろ!!」
いきなりオマエ呼ばわり…。
将来有望な若者。無茶をしてはいけない。確実に我々は“悪い例”だ!真似をしてはいけない!
彼とひとしきり話をした後、再び店を探すが深夜2時。もうどこも開いていない。
結局、銃の跡が残るスーパーでワインを買い込み部屋で飲むことにした。
明日は帰国する日。朝6時前の始発バスに乗らなくてはならない。ダーバンからのフライトは8時半頃。これを逃すとフライトに間に合わない。
果たして起きられるのか…。
こうして壮絶な夜は幕を閉じた。