第30話/封じられた「スリービアープリーズ」

もはやバンコクの美しい夜景は目に入ってこなかった…。

道路はものすごく渋滞しているが気にならなかった…。

初めて訪れたバンコクだが、ワクワクしない…。

南アフリカが刺激的すぎたからだ。

まったく異国の地にいながら、“同じアジア”にいるというだけで、安堵感が漂う。

目的のお店に着いても、イマイチ気持ちが上がらない…。

そんな時は“アレ”だ。

「スリービアープリーズ」

この旅で、幾度もなく我々を救ってきたこの言葉。
感謝してもしきれない。
恐怖心に襲われた時、緊迫感に包まれた時、異国の人と触れ合う時、全ての時にこの言葉を使った。
その度に、勇気付けられ、恐怖心に打ち勝つことができ、“はっちゃける”ことができた。

しかし、ここでは“違った”!

運ばれてきたのは、大きく長細い筒状の容器に入ったビール。
それに注ぎ口がついており、自分で注ぐ。
温くなりそうだが、一緒に氷が付いてきており、ジョッキに氷をたっぷり入れ、そこにビールを“自分で”注ぐ。

完全なる「スリービアープリーズ」潰し…。

これでは上がるものも上がらない…。

トイレに立とうとすると、現地駐在のモリモリのツレが
「使用後の紙はバケツにいれてください」

よく意味が分からなかったが、うなづきトイレへと向かった。

トイレの個室に入ると、普通サイズのバケツが置いてあった。

「これのことか…」

バケツからが異臭が漂っている…。

「そういうことか…」

タイは、バンコクとはいえ、下水が充実していないらしく、紙を流すと詰まってしまうため、紙はバケツに入れる。

より“ヘコ”んだ…。

「スリービアープリーズ」を使えないまま、ビールを飲み進めると、ある“モノ”、モノというか“女性”に目が止まった。

「あれ、あの子、誰かに似てない!?」

その子は“誰か”に似ていた。

「ひらっち!一緒に写真撮りな!」

嫌がるひらっちを無理やり誘い出し、“誰か”に似ているその子と写真を撮った。

“誰か”とは、この旅の間、ひらっちが最も会いたがっていた人、奥さんだ。
元気になったひらっちを見て、我々も元気になった!

ガンガンに呑み進めていたが、気が付けばフライトの時間。

慌てて会計を済ませ、一路空港へ。

モリモリの友人に別れを告げると、最後のフライトへと向かった。


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