「ハーフタイム中、みんなで“ブルーマン”のマスクを被っていよう」と試合前に話していた。
正確に言うと“出発前”だ。
ハーフタイム中はスタジアム内のサポーターが国際映像で“バシバシ”抜かれる。
命懸けで南アフリカにきた証として、なんとか写りたいと思っていた。
(今回は準備万端だ!15分もあれば、優秀なカメラマンがきっと我々を見つけ出す!)
断固たる決意をもってブルーマンを被ろうとしたその時!!
モリモリが
「オレ、おしっこ」
間髪入れずにひらっちが
「オレも行きたいっス」
あっという間にふたりはいなくなった…
しばらくひとりで被っていたのだが、ひとりでは目立たなすぎて、どんな優秀なカメラマンでも見つけられそうにないので脱いだ…
そんな一部始終を見ていた右斜め後ろの日本人のおばちゃんが、可哀想に思ったのか話しかけてきた。
「日本からですか?」
「え、はい、そうです」
当然日本からだ。
「どちらからですか?」
聞き返すと、
おばちゃんは
「ヨハネスブルグからです」
「………」
(この人もか…)
ツアー客以外の日本人と会うのは皆無で、時折会う日本人はほとんどが“南アフリカ”在住だった。
折角だから南アフリカの治安について質問してみた。
「南アフリカはホントに危ないんですか?」
おばちゃんは丁寧な口調で話し始めた。
「私たちは南アフリカに来て8年になるけど、危険な目にはあっていないわ。強盗には2回入られたけど、不在だったから大丈夫だったわ。夜はホントに危ないけど、昼間は油断しなければ比較的大丈夫。」
(おばちゃん!強盗に2回も入られりゃ充分だろ!しかも、油断しなければとか、比較的とか、充分危険そうですけど…)
おばちゃんの話を作り笑顔で聞いていた。(何度かツッコミを入れそうになりながら)
おばちゃん家族と一緒に写真を撮り終えると、今度は目の前にいた韓国人がなにやら話しかけてきた。
赤い韓国を髣髴とするTシャツにドレッドヘア、耳には数え切れないほどのピアス、そして“渡哲也”ばりのサングラスをかけた韓国人だ。その風貌に完全に圧倒された。
「右サイドの8番だれ?」
英語だが、言ってることは理解できた。
「マツイ。フランスリーグでプレーしてる。」
実は、前回のドイツ大会、韓国サポーターに囲まれたことがある。
日本がオーストラリアに負けた翌日、滞在地であるフランクフルトの街をフラフラしていると、向こうから“テーハミングッ”の大群がやってきた。韓国はこの日フランクフルトで試合があり、勝ってスタジアムから引き上げてきたサポーターの群れだ。
通り沿いの店をのぞくふりをし、群れが通り過ぎるのを待っていたのだが、どうも声が通り過ぎない。
「おかしいな、おかしいな、やだな、やだな~」なんて思いながら振り向くと、そこには数十人の“テーハミングッ”達がワカさん(わたしですが…)を取り囲むようにして「テーハミングッ!」を大合唱していた。(そりゃオレら負けて、アンタら勝ったけど、そこまでする!?)囲まれただけだが、それ以来、韓国サポーターにいい印象がない。※ちなみにモリモリは遠くからこの光景を見ていて、腹を抱えて笑ってました(怒)
しかもたぶんこの韓国人は“ボンボン”だ。そうでなければ、ドレッドにピアスをして、“渡哲也”サングラスをしている理由が付かない。
はっきり言って話したくなかった。
「グッドプレーヤーだ!」
ボンボン韓国人が松井大輔を褒めた。
「2番は?」
「アベ。レッズ、浦和レッズでプレーしてる。」
こんか感じで次から次へと質問をしてくる。
サッカーが好きで、日本代表が好きで、南アフリカまで行ってる訳で、サッカーの、しかも日本代表の話をされればノッてしまう。しかも褒められたら…
こっちが答える度にボンボンの韓国人は“笑顔”を返してくる。ようく見れば、渡哲也サングラスの奥の目も笑っている。
「一緒に次に行こう!」
ボンボンの韓国人はそう言うと、一番の“笑顔”で握手を求めてきた。
「イエス、ゴートゥギャザー!」
意味不明の英語を発しながら力強く握手。
日本と韓国はアジアではライバルだが、ここまでくれば同じアジアの仲間だ!特に、遠く離れた南アフリカではそれを強く感じる。
お互いすでに勝ち点3は手にしている。一緒に上に行ってもなの不思議もない。
“一緒に上へ!”
この旅で会う韓国サポーターとの“絆”がこの時つくられた。
気が付くと、選手がピッチに戻ってきた。
同じくして、モリモリとひらっちも戻ってきた。
「いやあ~、メチャクチャ混んでました。」

遅い!遅すぎる!この後、ブルーマンを被ることはなく、我々のファンの現地の子供にあげました。
わずか15分のハーフタイム。
しかし韓国サポーターに対する4年前の悔しい思いを払拭できた貴重な時間であった。

選手が出てきたゾ!「バモ、ニッポン!」
ちなみに左下に写ってるのが“ボンボン”の韓国人。いい人でした~。