「ユーロ2012」準決勝第2試合ドイツ対イタリアは、“我ら”がイタリアが勝利し、決勝戦へと進んだ。
試合は戦前の予想通りの展開。
ドイツはいつも通りの“4-2-3-1”。
ただ違うのは、右サイドには、準々決勝で素晴らしい動きをしたロイスでも、元々レギュラーのミュラーでもなく、本来“トップ下”のクロースを、“ワントップ”には、ムービング系FWのクローゼではなく“前線に張りつく”タイプのマリオ・ゴメスを起用した。
この試合前に、ドイツのレーブ監督は国内で「スター」に祭り上げられていた。これまでの選手起用が“ズバリ”と当たっていたからだ。
レーブ自身も「サイドはワイドに開きたい…」と言っていたにも関わらず、右サイドにクロースを配したのには多少なりとも違和感があった。さらに準々決勝後には、エジルが「クローゼとロイスがいたおかげでやりやすかった」と言っていたにも関わらず、この二人ともスタメンから外した。明らかに選手たちが支持していたのは“クローゼ”と“ロイス”だった。
監督の慢心…。
そんな雰囲気が漂っていた…。
一方のイタリアは怪我人が復帰。
特にCBと左サイドバックをこなすキエッリーニと、予選リーグでMVP級の働きをしていたデ・ロッシの復帰は、イタリアにとって明るいニュースだった。
イタリアのシステムは“4-4-2”。キエッリーニは左サイドバックに、デ・ロッシは左MFでスタメン出場を果たした。
試合はというと、ほとんど驚きがない展開。
ドイツがサイドを中心に攻撃を組み立てる、がイマイチ機能しない…。
案の定、“トップ下”のクロースが中へ中へと侵入を試みる。
結果、ポジションが被ってしまうエジルが右サイドへ流れると、クロースが全く戻ってこないため、エジルはずっと右サイドにいることになった。ドイツは勝手に、イタリアが最も注意していた選手を、ゴールから遠ざけることになってしまった…。
イタリアは、これまた“予想通り”サイドバックの裏へとボールを供給しつづけることで攻撃を組み立てる。
ただ驚いたのは全てが“右サイドバック”の裏ばかりへとボールを送っていた。
左が空いていようが、右が空いてなかろうが、お構いなく“右サイド”へとボールを送り続ける。
そもそも、ドイツは「右サイドバックが弱い」と言われていた。
弱いと言ってもそこまで弱いわけでもないだろうが、左には“世界最高”のサイドバックのラームが、その他のポジションにも世界屈指の選手が揃っているので、「それに比べれば」と言うことなのだが…。※今回はCBもやや弱め。
徹底的にドイツの右サイドへとボールを送り続けた。
守備時には、右サイドを“無視”…。
ドイツの右サイドバックのボアティングは、マークする相手が目の前にいないため、ドイツの攻撃時に“フリー”となっている右サイドで高い位置を保ち、積極的に攻撃に参加していた。
イタリアの戦術をまとめるとこうだ。
①最終ラインを高く保ち全体をコンパクトにする。
②二人のFWはドイツのCBがボールを持つとすぐさまチェックに。
③攻撃は徹底的に“左サイド(ドイツの右サイド)”。
④守備時は徹底的に“右サイド(ドイツの左サイド)”をケア。その際、左サイド(ドイツの右サイド)は空けてもよい。
イタリアはそもそも対戦相手を徹底的に分析し、自分たちのスタイルを決めるサッカー。
基本的には相手の“長所”を消すことから戦術を組み立てる。
ドイツやスペインの“自分たちのサッカーを貫く”とは対極にあるのがイタリアサッカーだ。
しかし今回のイタリアは、相手の長所を消すのではなく、相手の“弱点”を突くサッカーを志向している。
「今大会のイタリアが変わった」を言われるのはこの点を指して言っている。
イタリアの先制点はその左サイド(ドイツの右サイド)から生まれた。
決めたのはバロテッリ!
イタリアFW唯一の“高さ”を持つバロテッリが豪快にヘディングシュートを決めた。
イタリアが勝利するための“最後のワンピース”バロテッリがゴールを決めたのだ。
俄然勢いずく“オレ”!!
前半40分頃にはモントーリボのロングパスからディフェンスラインの裏への抜けだし、キーパーと1対1の状況に。
今大会のバロテッリは、キーパーと1対1になる度に、免許取り立ての初心者のように“徐行”を繰り返し、ことごとくチャンスを潰していた。
が、この時は迷いなく右足を振りぬき、ペナルティーエリアの外から豪快なミドルシュートをゴールに突き刺した!
後半に入るとドイツは次々と選手を交代し、リズムを取り戻そうとするが、一旦失った流れを引き戻すには至らない。
時間を追うごとにイタリアの守備は安定。
現代に舞い降りたローマ帝国のグラディエーターたちがドイツの攻撃を体を張って防ぐ。
攻めてはいるが、ドイツに得点の予感は“ない”。
ロスタイムにPKで1点を奪われたものの、2対1で“我ら”がイタリアが決勝進出!
クロース起用にこだわったレーブは、クロースの低調なプレーをともに「ユーロ」を去ることになった…。
ともに低調だったクロース、そしてマリオ・ゴメスの所属チームは“ドイツ最大”のクラブチームであるバイエルンミュンヘン。
どこかからか“圧力”みたいなものがあったかもしれない…と思ったりもしている。
“優勝候補筆頭”と言われたドイツの最大の敗因は“上から目線”だったのではないか。
イタリアを見下し、頭ではすでに決勝戦へと向いていたように観えた。
一方のイタリアは、自分たちが“弱者”であることをしっかりと理解していた。
“強者”から勝利を掴むため、綿密に分析し、忠実にそれを遂行した。
イタリアは勝つべくして勝ったのだ!
決勝戦の相手は予選リーグでも対戦した“世界王者”スペイン。
強引に中央突破を図ってくるスペインに対し、イタリアはどんな“弱者”のサッカーを実践してくれるのか。
現代に舞い降りた“グラディエーター”たちの決闘を最後まで見届けたいと思う。

2点目直後のバロテッリの“感情むき出し”のパフォーマンス。サッカー界に蔓延る“人種差別”に対する抗議でもあった。
なんか人間的に成長してる気がするが…。気のせいか…。
※ただ、イエローカードはしっかりもらいましたが…。