なんとかゲートを見つけ出し、いよいよスタジアムの中へ。
4次販売で取ったチケットはなんと“3階席”…
「超後ろジャン!」
モリモリの怒りにも近い言葉を無視しながら座席を探す。
完売と聞いていたが比較的空いているため、座席はすぐに見つかった。
ダーバンスタジアムは(サッカー専用ではなく)陸上トラックの付いた総合競技場のため、見にくさを心配していたが、かなり傾斜があるため、3階席からでもとても見やすい。
モリモリとひらっちはすぐさま“”国旗”の取り付けにかかる。

国旗を3枚繋げ垂らそうとするが、下からの風で舞い上がってしまい、てんてこ舞いのモリモリとひらっち。

メインスタンドの3階席。下にはウルトラスがいました。

ひらっちのテンションも最高潮だ。
ピッチ上では各チームの練習が始まった。
練習のグループ分けを見ながら、日本のスタメンを「あーだこーだ」言いながら予想。
これはこれで楽しいのだ。
「初戦と同じだよね」
モリモリが切り出す。
「あれ、俊輔と玉田、スタメン組に入ってるんじゃない?」
「おお、撃ち合うつもりか?」
3人で好き勝手なことを言いながら、選手同様、我々も試合に向けてテンションを高めていく。
すでにスタジアム内にはブブゼラの爆音が鳴り響いていた。
サポーターの数は圧倒的にオランダの方が多い。
日本は大会直前にシステムを変更していた。
それまでの日本は守備面で大きな問題を2つ抱えていた。
ひとつはサイドの守備。現代サッカーにおいてサイドは「ボールの通り道」と呼ばれ、サイドを中心にボールは運ばれていく。このサイドの攻防が試合の主導権争いを左右する、とまで言われている。これまで日本の右サイドはサイドバックに内田篤人、その前に中村俊輔のカタチがファーストチョイスだった。俊輔が中に絞ると、すぐさま内田が空いたスペースを駆け上がり、俊輔とのワンツーからクロス、というのが日本の攻撃のひとつのパターンでもあった。しかしながら俊輔が中に絞る時間が多いため、サイドには内田ひとりしかいない状況が生まれやすく、相手が複数で同サイドを攻めてくると簡単に突破されるシーンが増える“諸刃の剣”コンビでもあった。この日の右サイドはサイドバックに駒野、その前に今大会コンディション抜群の松井大輔という初戦同様の二人を起用した。俊輔と玉田はベンチスタートだった。
一方、スピードスター「ロッペン」を怪我で欠くオランダは、左サイドをファンデルファールトとファンフロンクホルストというテクニックは高いが、若干スピード感に欠ける二人をチョイス。ボールポゼッションを高め、高い位置でのプレスを強める作戦のようだ。
二つ目の問題はボランチ。従来の日本はポゼッションを嗜好するあまり、キープ力と展開力のある選手を二人置く(ダブルボランチ)のがベースだった。しかしながら、ボランチがゲームメイクに加え、バランスの悪いサイドをカバーするため、持ち場を離れることが多く、結果危険なバイタルエリア(ペナルティーエリアのちょっと外側、センターバックとボランチの間のスペース)が“スッポリ”空くことがしばしばあった。大会前の親善試合で簡単に点を取られることが多かったのは、このバイタルエリアが空いてしまうことが多かったからだ。そこで阿部勇樹をアンカー(ワンボランチ)に据え、センターバックの前でバイタルエリアの“門番”をすることになった。この“アンカー”というポジションは現代サッカーにおいて、もはやなくてはならないポジションで、あの攻撃サッカーの象徴ともいえるバルセロナでさえアンカー(ブスケツ)を置いている。阿部は守備力の高さとコンディションの良さを買われての起用だ。
マッチアップするのは、オランダのエース「スナイデル」。
親善試合での数々の失敗を繰り返した日本にとって、(現状では)この守備的とも取れる布陣が最良の方法であることは間違いない。
一部のジャーナリストが「今後の日本のためにも3戦全敗すべき」と言っていたが、現地まで足を運ぶ一般人にとって、“捨て試合”をつくられるなんてもってのほかだ。対戦相手を分析し、それに適した戦術・戦略を持って挑むのは、もはや日本代表の“義務”ではないだろうか。そうでなければ、ある意味“命懸け(まあ、今回は…)”で現地まで行く意味がない。そういった意味で、岡田監督の“悪あがき”である大会直前でのシステム変更は充分評価されるものだったと思う。死ぬために戦うような“玉砕”はいらない。人間は生きる残るために“知恵”を使う。今回の日本代表は「システム変更」という知恵を使った。生き残るために…
オランダはセンターバックに問題を抱えていると言われていた。マタイセンは足元に難があると言われていたし、ハイティンハはポジショニングに難があると言われていた。
この日の日本は初戦に引き続き本田圭祐のワントップ。この本田と今大会絶好調の松井と大久保嘉人がどう絡むかが鍵となる。エゴイスティックなプレーを控え、ワンチャンスをいかに活かすかが勝負の分かれ目となる。
そしてもうひとつはオランダのダブルボランチ。この日のオランダは、ファンボメルとデヨンクという、強靭なフィジカルと激しいタックルが売りの二人を同時に起用。これにより中盤の守備力は飛躍的にアップするが、展開力が乏しいため“トップ下”のスナイデルが引いてボールを受けるカタチが多くなる。オランダのワントップのファンペルシーとの距離が開くため、ファンペルシーが孤立しそうだ。サイドにスピードがない(言いすぎだが…)ため、オランダの攻撃は「スナイデル(パス&ゴーで前へ)→サイド→ファンペルシー(ポストプレー)→スナイデル」くらいしかなさそうだ。
そんなことを思っているうちにオランダボールでキックオフ。
優勝候補オランダに挑む90分間の日本の戦いがはじまった。

我々は「ブルーマン」に変装し観戦…の予定でしたが、ゴムが臭すぎてすぐに脱ぎました(笑)
後ろのオランダ人笑ってるし…