チャンピオンズリーグ第2節。
ACミランはアウェーでアヤックスと対戦した。ミランは開幕戦となるオセール戦に2-0で勝利し勝点3。リーグ戦開幕直前に大型補強を敢行したミランだが内容はイマイチ。攻撃陣の中で“唯一”好調だったパトはこの試合も怪我のため欠場。ロナウジーニョも怪我のようで欠場し、前線はズラタンとロビーニョの“2トップ”。トップ下にセードルフが入ることになった。中盤は右からフラミニ、ピルロ、ガットゥーゾの“トリプルボランチ”。怪我人を抱えた中でのアウェー戦ということもあるだろうが、前線が守備をしないための“苦肉の策”ともいえる布陣。最終ラインは右からザンブロッタ、ネスタ、チアゴ・シルバ、アントニーニ。ネスタとチアゴが揃うと安定感は高まるが“お尻デッカチ”の印象が強い。
一方のアヤックスは初戦のレアルマドリード戦を0-2で落とし勝点0。“大エース”のスアレスが復帰する今節は仕切り直しの一戦となる。フォーメーションは4-4-2。数字の並びではミランと同じだが、中盤の両サイドがワイドに開き、スアレスもボールサイドに流れるため、サイドアタックを重視した布陣となっている。
アウェーでのアヤックス戦。“当然”サイドの攻防が鍵となる。
ミランボールでキックオフ。
“いつものように”ボールを回そうとするが、ホームのアヤックスが開始直後から“ハイプレス”を敢行。ミランは“いつものように”ボールが回らない。ミランは(特にアウェーで)開始直後ボールを回してリズムをつくる“横綱”サッカーをしようとするが、逆に相手のハイプレスにあってリズムを失う試合が多い。ミランはもはや横綱ではない。特にアヤックスのような強豪チームが相手となれば、開始直後から“ガツン”と行き、相手を引かせる“チャレンジャー”的なサッカーが必要なのだが、今回も“いつものように”あっという間に相手に主導権を握られた。
それでも(ベンチからの指示なのか)2トップのズラタンとロビーニョはワイドに開き、できるだけ高い位置をキープしようとしていた。中盤のトリプルボランチのサイド(フラミニとガットゥーゾ)も目一杯開き、アヤックスのサイドアタックを牽制。最終ラインはやや深いが、ピルロを中心にワイドに攻めようとする意図は感じた。しかしそれもわずかな間だけ。アヤックスのプレスが“司令塔”ピルロに襲い掛かる。
ミランの攻撃のほとんどはピルロを経由して行われる。間延びしがちなミランの中で、最終ラインと前線を繋ぐ“潤滑油”のような役割をピルロが一人で行う。最終ラインからピルロへとボールが入った瞬間、2人、3人とアヤックスがプレスを掛けまくり、“ピルロの位置”でボールを奪いまくる。ピルロの位置とは“バイタルエリア”だ。バイタルエリアでボールを奪うと、危険なショートカウンターを連発。スタジアムを沸かす。ピルロがマークにあったことで、折角ワイドに開いていた中盤のサイドの選手も、引き寄せられるように中へ。10分が経過するころにはミランのサイドにはザンブロッタとアントニーニの二人だけになってしまい、アヤックスのサイド攻撃が“炸裂”し始める。
アヤックスの左サイドの“ゲームメーカー”エマヌエルソンのサイドチェンジが面白いように決まりだし、右サイドに張り出したスアレスへ。スアレスは躊躇なく“1対1”を仕掛ける。その度にスタジアムには歓声が沸きあがる。スアレスのプレーは“俯瞰”で見ている観客が思い描くプレーと“シンクロ”している。観客が沸くのも当然だ。
先制点は“当然”アヤックス。
今度は左サイドに張り出したスアレスが“カットイン”。ミランの“至宝”ネスタが引っ張り出され“衝撃”のまた抜き。右足のアウトでマイナスのパスを送ると、これをモロッコ代表のエムハムダウェイが反転シュートで豪快に決めた。
アヤックスの伝統である“ウイング”不在の4-4-2。しかし、サイドアタックはしっかりと遂行されており、効率という面ではコッチのフォーメーションの方が優れているのでは、と思えるほど機能的だった。サイドにはサイドバックとサイドハーフ、そしてスアレスがおり、数的優位を保つ。最終ラインは高い位置をキープし、プレスは“外から内”。“内から外”のミランとはボールを奪う位置が全く異なる。ミランがボールを奪える位置は自陣深くのサイドバック近辺。一方のアヤックスはバイタルエリア近辺でボールを奪う。ゴールまでの距離を考えれば、どちらが効果的かは明らかだ。
ミランはセードルフを右ウイングの位置に上げ“3トップ”ぎみにチェンジ。高い最終ラインの裏のスペースを狙う。これは一定の成果を得ることとなる。ロビーニョが再三“裏”をとることに成功するが、ことごとくシュートをミス。試合カンが戻っていないのか、はたまたこの程度なのか…。
ミランの同点ゴールは突然訪れた。
“裏”をとったズラタンが、躯体を駆使してDFをブロックしループシュート。完全な“個”の力で同点とした。
後半に入るとアヤックスの一方的な展開に。
試合は1-1のドローで終わった。
アヤックスのサッカーはスタジアムの雰囲気も合いまって“素晴しい”サッカーを展開してくれた。サイド攻撃、ハイプレスなどなど、サッカーの“面白さ”がたっぷり詰まった“現代的”なサッカーをしてくれた。一方のミランはプレスがかからず、効果的な攻撃がなく“いつものように”面白くない。個だけのサッカーは“時代遅れ”。ホントに見たくない。
サッカーの“質”の差を感じた一戦いだった。
同じG組のレアルマドリーがオセールに1-0で勝ったため、このグループの順位はレアルマドリー(勝点6)、ミラン(勝点4)、アヤックス(勝点1)、オセール(勝点0)となった。
得点力不足で“随分”叩かれているレアルマドリーだが、モウリーニョのもと、チームとしては確実に向上していると思う。“個”の象徴ともいえるクリスチアーノ・ロナウドですらきっちり“自分の持ち場”を守り、不用意にソコを離れることがない。戦術をしっかりとこなしているのだ。攻守が瞬時に入れ替わる現代サッカーにおいて“決まりごと”があり、それをきっちり全員がこなすことはとても重要だ。マドリーには“決まりごと”が存在する。「まだチームとして機能するには時間が必要」とモウリーニョは言うが、チャンピオンズリーグに限っていえば、“充分”優勝の可能性はあると思う。サイドバックが(あまり)上がらないモウリーニョのサッカーにおいて、前線での“個”の存在は不可欠だ。だが、好き勝手やっていいという訳ではない。“決まりごと”をしっかりこなすことがチームの安定感へと繋がる。その上に“個”が加われば…。
観ている限り、ミランに“決まりごと”は存在しない。その場しのぎの“個”頼みのサッカーだ。浮き沈みが激しい。早く手を打たないと“今シーズンも”手遅れになってしまう…

いいなあ~スアレス。勝負する姿勢が好きです!最近の日本代表ってサイドで勝負するシーンほとんど観ませんよね…