ホテルへ戻るころには、あたりはスッカリ暗くなっていた。
この日は、ワカさんが日本代表の次に愛している“イタリア代表”の試合がある。
相手は“圧倒的”格下のニュージーランド。初戦のパラグアイを引き分けたイタリアはぜひとも勝って“勝点3”を手にしたい相手だ。
慌てて目の前のファンフェスタ会場へ。
試合はすでに始まっていた。
この日は、昨日にも増して“黒人”が多い。あたり一面“真っ黒”だ。
それでも愛しているイタリアを応援しようと、スクリーンを凝視する。
「うわ~、外した~」
ワカさんが頭を抱える。
「うわ~、また外した~」
またまた頭を抱える。
試合が進むにつれ、ある“異変”に気が付いた。
黒人は“みんながみんな”ニュージーランドを応援していた。
アフリカの人たちは“原則として”弱いチームを応援するようだ。
イタリア対ニュージーランド。どう考えても弱いのはニュージーランドだ。
「ちょっとヤバくないっすか?」
ひらっちも異変に気付いたようだ。
周囲の黒人は敵対視でこちらを見ている。
そりゃそうだ。我々3人はイタリア代表のユニフォームを着ている。
どっちを応援しているのかは一目瞭然だ。
「ジャージ着てイイっすかねえ?」
危険察知能力に長けたひらっちがいち早く防御策にでる。
一方のモリモリは
「だ~いじょ~ぶ、だ~いじょ~ぶ」
相変わらず能天気だ。
イタリアがミスをした時の歓声が大きくなってきた。
我々の周りに黒人が集まりだしたのだ。
イタリアがミスをする度に、我々に向かってガッツポーズをし、奇声を上げる。
「これヤバイな…」
もはや試合どころではない。
違う意味の緊張感で“あっ”という間に試合は終わった。
「もうマジでヤバい!すぐ飯食いにいくか…」
慌ててファンフェスタ会場を後にする。
夕食はホテルビーチ1階のレストランでとることにした。
我々は昼食もここでとったのだが、フクさんとナベちゃんはその時いなかったため、そこに行くことにした。

店内には日本人は誰もいなかったため、異国情緒満載!
早速ビール。
「スリービアー、ではなくファイブビアープリーズ」
空腹の我々は目に付いたものを“ドンドン”注文する。

ここのステーキは“絶品”!これで800円くらい。とにかく安い!

シュリンプ2kg!他のテーブルの外人さんのほとんどが注文していた。たぶんこの店の人気メニュー。これも800円くらい。ホント安い!この他にもサラダや牡蠣、ムール貝などを注文。野菜は新鮮だし、貝類のウマイ!味付けはスパイシーだからビールも進む。
フクさん、ナベちゃんチームと我々は、日中別々に行動していたため、お互い日中の報告をしあった。
「オレらはビーチをず~と歩いて、ウシャカマリンワールドまでいっちゃいました」
モリモリを中心に日中の出来事を話す。
「で、フクさんたちは何してたんスか?」
「オレらはね、街中を徘徊していた」
「え?徘徊って?」
「ここの前の道をず~とむこうまで、美術館のほうまで歩いてね」
「美術館?メチャクチャ遠いじゃないですか!?しかもその辺、危険地域じゃなかったでしたっけ!?」
「そう。何人にも「お前ら迷ってんのか?」って声掛けられた。怖いから無視してたら覆面警官で…」
この二人、“メチャクチャ”チャレンジャーだ。
会話が弾めばビールも進む。
我々(浜松3人組)はビールを飲むために生きているようなもの。容赦なくビールを飲みまくり、次々とジョッキを空にしていった。
気が付けば、
「スリービアープリーズ!」
東京のふたりは我々のペースについてこれない。
大食漢のモリモリとフクさんがいるため、料理もどんどん注文。これにナベちゃんも追随し、テーブルはさながら“大食い選手権”の様相となった。
「もう食えないっス…」
ひらっちとワカさんは早々にギブアップ。ビールも10杯以上空けている。お腹は“パンパン”だ。
「ビール入んないからワインにするか」
南アフリカの赤ワインを注文。
また、これが“ウマイ”!
次々とボトルを空にしていく。
そんな最中、奥のテーブルに“イタリア人”がいるのを見つけた。

美しいブロンドヘアーに白い肌。ビールには目もくれず、ワインを飲むその姿はイタリア人そのもの!
この日の試合は引き分けに終わったため、心なしかテンションが低い。
「おい、イタリア人いるよ!一緒に写真撮りて~」
ワカさんがひらっちに話しかける。
「いいんじゃないですか?」
「見てみい、テンションメチャクチャ低いじゃん!?行きずらいじゃん」
「もっと飲んじゃえば行けるんじゃないですか?」
「!」
さらにワインを頼み、さらに“酔っぱらう”ことを選択。
ワカさんのテンションは見る見るアップ!
「よ~し、行ってくるか!」
「じゃあオレも行きたいっス!」

待望の1枚!女の子ふたりとの“ツーショット”を目論んだが、彼氏を思われる男が乱入し、5人で撮ることに…。
「よ~し、こうなりゃどんどん行こう!」
怖いモノがなくなった!

オランダ人、デンマーク人、そして日本人の“奇跡”のコラボ!
「よ~し、ファンフェスタ行こう!」
この頃にはワインも10本くらい空いていた。
怖くて、尻尾巻いて帰ってきたのに、再びファンフェスタへ行くことにし、テーブル担当のウエイトレスにお別れの挨拶。
お会計を済ませると、ひとり当たり2,500円くらい!とにかく安かった!
ダーバンの夜を日本色に染める“伝説の夜”の幕が開けた…
つづく